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パーキンソン病の山登り“yucon”の登山と闘病の記録

難病パーキンソン病を患ってから山登りを始めた“yucon”の山行と闘病の記録

遭難現場の検証② ~素晴らしい仲間達と共に~

 

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 ようやく「ゴロ谷」を再び訪れることができた。

私が今夏6日間を過ごし瀕死の状態で発見され谷だ。

当時、私の救助に全力を注いでくれたヤマレコ仲間が「yuconさんの落とし物を探しに行こう!」と軽いノリで計画してくれたが天候が悪かったりメンバーの都合がつかなかったりで12月までずれ込んでしまった。

 前々回に続き山岳ライターのNさんとその奥様が同行され総勢6名での現場検証となった。丁字尾根は稜線にあがると3~5cmの積雪、落ち葉の下の霜柱とともに踏みしめると「サクッ、サクッ」と心地よい音を立てる。横浜市在住のN婦人は「この感触気に入った」と大変喜んでおられた。

 P918で小休止し遭難ポイントのP967へ到着、前週降りるのを躊躇ったロープ場を降りて改めてP967を御池岳側から見るとやはりここだという確証がもてた。このポイントを小又谷側へ巻かず(左巻きせず)にゴロ谷側(右方向)へ進み斜面を徐々に下っていったのである。左側にはテープもあるが当時は薮も鬱蒼として見えなかったのか私も同行者も左へ巻くという発想は全くなかった、疑いもなく薄っすらと踏み跡が残るゴロ谷側へ二人してこぼれ落ちて行ったのだ。実際同行者に出会ったのはこの地点よりも数十メートル御池岳寄りでゴロ谷への傾斜が緩いところだ。そこで出会って2人で不幸な方向へ舵を切って行ったのだ、そしていったん切った舵が戻ることは二度となかったのである。

 3人の仲間達は「私を絶対安全にゴロ谷へ連れて行く」という約束事を掲げていたようでTさんは下見をWさんはロープやエイト環などの登攀具を準備していてくれた。Nさんもハーネスを余分に持ってこられ、借り物だらけの登攀具初体験である。薄く雪の残る斜面なのでまずアイゼンを装着しハーネス、カラビナ、エイト環にロープを通していざ下降だ。これが結構難しい、手さばき脚さばき体の使い方を皆から教えてもらうのだが左右にぶれたりしてなかなか安定しません。しかし、使いながら「ハーネス」「エイト環」はうまくできている道具だとつくづく思った。この8ノ字型の金具はこれ以上ないという究極の道具、やはり物事は突き詰めていくと極めてシンプルになるのだ。

 降り立った場所は私が水を求めて落ちた地点より上流の地点、ここから10~20mほど下流に段差があり当時は水が流れており這い上がるのは無理であった。その段差をロープを借りて降りてみると見慣れた光景が目の前に広がっていた。

 間違いない、この場所だ。朦朧とする意識のなかで6日間を過ごしたゴロ谷だ。 一昼夜雨に打たれ続けた木もある。6日間飲み続けた水が流れる沢があり、ザックを枕に眠りつづけた木の根元、意を決して登り始めた尾根への取付き、ほとんど滑落しながら降りて最後の力を振り絞って這い上がった川岸・・・・・。生死の狭間を彷徨った谷底、この季節は水量も少なく段差も低くなっており(台風や大雨等により地形や谷の様子も若干変わっていた)青々と生い茂っていた草木は枝だけになっており尾根まで見通すとケガさえしていなければ自力で脱出が可能であったようだ。

 ひとまず皆が食事をして休憩をすることになった。私は休憩も食事もせずに自分が彷徨った谷底を歩き回った。何も言葉が出なかったが不安に駆られることもなかった。ヘリコプターへピックアップされた場所、真っ暗闇の夜すぐ耳元に鹿の足音を聞いた川岸、改めて冷静に見ると当時でも普通の心身の状態であれば自力脱出が出来たであろう。しかしながら当時は私の心理面にも身体面にも巨大な壁が立ち塞がっていて救助をひたすら待ち続けるしかなかった。

 みんなに遅れて休憩と食事を取り最後に上から投げ捨てた「コッヘルのふた」「めがね」「一眼レフカメラ」「携帯電話」これらを全員で手分けして探しまわった。しかし可能性のある斜面はこの半年間の間の台風による大雨等により崩落も起こっており土に埋もれたか鉄砲水のような濁流に流され滝壺へ落ちたか?一時間以上探しまわったが、何一つ発見することができなかった。見つからないことは予想はしていたが現実となると諦めきれないものだ、しかし日没から逆算すると撤収のタイムリミットであり続きは雪解け後に再訪することを確認して帰路に就いた。ロープを使っての登攀であったが、下降より登る方がうまくできた。雪解け後に再訪する時は自前のハーネス,カラビナ、エイト環・・・このあたりは自前で揃えておくべきか。

 

 仲間達は興味本位なふりをしながら同行しているが ホントのところは私のために動いてくれたんだと思う。下見に来て安全なルートを探し、道具を準備して安全に気を配り・・・・。

 10月から再開した山登りは常に複数人での山行だ。始めた時は単独だったし以降も何故か「山は基本単独」と決めつけていたが、大人数での山行はまた違った楽しさが味わえる。「苦しさ、自然の脅威、絶景、登頂の喜びや達成感」独りで感じるより、その場で仲間と共有すること自体が素晴らしい体験である。

 ネット上だけの関係だと思い込んでいた仲間が命懸けで私を探してくれた。

素晴らしい仲間達にめぐり会えた幸運を素直に感謝したい。